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相続財産評価

先日、家庭裁判所で決裂した、遺産分割協議。
その中で、当方の価格調査報告書と先方の不動産鑑定評価書に関して、お互いに意見書、コメントなどをぶつけ合いました。
先方の不動産鑑定士は、鑑定士の番号から察するに、ご年配・古豪の(大?)先生のようでした。
当方は、先方に対し、
「まるまる一年、価格時点を間違えているのではないか?」
「鑑定評価額を恣意的に低位に誘導しようとしているのが明らかに見て取れる。」
「用語の使い方が、明らかに間違っている。」
「鑑定評価書に署名していないのは、不動産の鑑定評価に関する法律に明らかに違反しており、処分の対象となる。」
などの指摘をしました。

これに対し、先方からは、当方の報告書に対して
「建物の内部を見ていないので不当な鑑定評価である。」
「建物再調達原価の金額が整合していない。」
などの指摘がありました。
うなずける部分もあるとともに、
「不動産鑑定評価基準や、不動産の鑑定評価に関する法律に明記されていないことを、どうしてこうも自信たっぷりに主張できるのであろうか・・・?」と疑問に思いました。
当方は、自らの主張に対しては、原則として、不動産鑑定評価基準や、不動産の鑑定評価に関する法律に根拠を求めている時にはその部分を抜粋して記載しましたが、先方はそのようなことはありませんでした。
家庭裁判所の裁判官・調停員・書記官等が客観的・中立的に判断してくれれば良いがなぁ・・・と思っていたら、当方の依頼者に因れば、「あっというまに調停不成立に」なってしまったようです。
こうなると本訴ですかねぇ・・・
争いごとを好まない小生としては若干憂鬱になるとともに、このような場合の意見書に関しても、可能な限り感情的なものを排除して、専門職業家としての良心に基づき、客観的中立的に意見を申し述べ、記述することが重要であるなぁ・・・と改めて自省しました。
依頼者に対して、唯々諾々と、まるで番犬のように、その意向に沿うのではなく、毅然として是々非々の態度で臨まないと、「報酬(お金)のためだけに動く」「カネの為に誇りを売る。」ようになってしまいます。
われわれやまと鑑定パートナーズはもちろんですが、不動産鑑定士というものは、「鑑定評価で食っている」わけですが、「鑑定評価を食い物に」したり、「鑑定士のハンコを売り物に」することは絶対にあってはならないことです。
当たり前のことなのですが、日々の鑑定評価や価格調査にまい進している中で、いつかそれを忘却、とまではいかずとも、軽視するようにならないよう、自省と自戒、そして「不断の勉強と研鑽」を怠ってはいけないと思いました。

僕らは、日常、他の不動産鑑定士の方々と接触することが多いわけですが、本当にいろんな鑑定士がいます。
レヴェルと言っては大変失礼ですが、ヴェテランの鑑定士の方で、相当のご年配の方でも、ITを使いこなし、直近の鑑定業界の状況や情報を的確に把握して対応している方もいらっしゃれば、反対に「パソコンは使わない。」「メールはキライだ。」とまで仰る方々もいらっしゃるようです。
(一体どうやって作業しているのでしょう・・・(><))
一概にPCスキルが鑑定評価の水準を決定付けるとは言えませんが、基本的には読者の皆さんもご想像の通りだと思います。

鑑定業界全体が、より一層努力し、向上していかなければならないと痛切に思い直す、今日この頃でした・・・。
では( ̄T ̄)/

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相続財産の評価

相続財産の鑑定評価の依頼を受けました。
都心の商業地や住宅地にいくつか亡父の残した財産があり、これらを兄弟で分けるのですが、紛争となって、家事調停に持ち込まれているようでした。

依頼者のお話を承るうちに、「やられているなぁ・・・(><)」という感想を持ちました。

依頼者の相手方は、兄弟であるわけですが、亡父の財産につき、ここ数年で相続対策を行っていたようで、その相続対策が、「税金を納めなくて済むようにすること。」のほか、「他の相続人の相続分を減らすこと。」を目的としていた様子が見て取れました。

相手方には弁護士がつき、もちろん税理士もいるようですが、これら専門家がどうやら全て相手方についているようなのです。
そもそも専門職業家たるもの公平中立であるべきですが、どうも依頼者は亡父と疎遠だったようで、弁護士も税理士にも相談も依頼もせず、相手方の弁護士が中立であることを信じて(盲信、と申すべきでしょうか)調停に臨んでいたようです。

僭越ながら、当方からは「それではまるで丸腰で戦争に行くようなものです。」と申し上げてしまいました。

幸か不幸か、先方の鑑定評価書があまりにも稚拙なものでしたので、当方もある程度ご協力できそうでしたが、やはりこういった紛争状態に近い場合には、鑑定士ほか専門家の協力が不可欠であり、そのための費用は惜しむべきではないでしょう。

個人的には、そこまで行かない段階で、円満に解決できるのがもちろん当然望ましいとは思うのですが、どうもやはり相続財産の額が大きければ大きいほど、争いは苛烈になる傾向があるようですね。

ただ、人によっては、「自分は一銭も要らない。」という方がいらっしゃるのも事実でしょう。
これは、人それぞれの生き方や人生観、家庭の状況もありますから、一概に肯定も否定もしづらいですね。

われわれ不動産鑑定士としては、弁護士のように「社会的正義」を追究するというよりは、その不動産の「価格の妥当性」を検証することになります。
(ただし、「社会的正義」に反する可能性のある依頼は、謝絶する場合がありますね。)

それでは(^T^)/

老朽化マンションの建替え

最近、というよりは今後、問題になると思われる一つが、老朽化マンションの建替えでしょうね。

鉄筋コンクリートの建物であれば、税法上の耐用年数は別として、通常は建築後30年を超えると、そろそろ建替えの声が聞こえてきます。(管理や修繕の状態によって千差万別なのですが・・・。)

ここでポイントとなる一つは、
「建て替えをした場合の、想定新築建物の容積率は如何に?」
ということです。
かなり老朽化が進んでいても、現状の建物の消化容積率よりも、想定新築建物の可能容積率が低い場合、建て替えを進めることにより、新築建物の床面積が減ることになり、その分、区分所有者の取り分が減ることになります。

都心部等で多いのが、「既存不適格建築物」すなわち、建築当時は適法であった建物が、同一の建物を建てようとすると現行の法規では違法になってしまう、というものです。

上手くいく建て替えは、建替えた場合の床が現行建物の床を上回るケースで、上回った部分を第三者に売却するなり、施工するゼネコンに保留床として取得してもらうなり、区分所有者の持ち出しが少なくて済むようなケースが多いのではないでしょうか。

いずれにしろ区分所有者の合意を取り付けるのに入念な調整と長い期間を要することが多いので、われわれ不動産鑑定士やゼネコン、弁護士や会計士などでチームを組成してコンサルに当たるのが望ましいでしょうね。

このようなケースでの鑑定評価は、どの時点のものか(計画段階か、実施段階か、権利配分段階か)、施工費・期間・権利調整などにより変動するため、かなり複雑なものとならざるを得ないでしょう・・・。

ご相談がございましたらどうぞお声をお掛け下さい。

ではまた(^T^)/

テーマ : 不動産
ジャンル : ビジネス

金融?現物?

梅雨の晴れ間で爽やかな(むしろ暑くなりそうな)東京の午前中です。
o(^o^)o

さて、以前のこちらのブログで、「金融?」「現物?」という議論がありましたので、読者に誤解を与えないために念のため記事にしておきます。
(実際は対立する議論ではないのですが。。)

「金融だ?」の項は、
「金融情勢・経済情勢や、融資条件の異なる異時点間の同一不動産の価格は異なる。」
というのが趣旨であり、
「同一時点の同一不動産の価格が、金融条件によって異なる」
という意図ではありません。

「不動産現物の収益率もしくは期待利回り・還元利回りも、異時点間では異なる。」
のと同義と思います。

賢明な読者の方々には自明のことかもしれませんが、趣旨としては、金融の条件の緩いとき(特に量的緩和)には不動産価格が上昇し、総量規制等厳しい場合には下降局面となる場合が多い、という意味で書いたものです。  

また、「現物だ」の趣旨は、主として企業の事業用不動産の収益率についてであり、「金融だ」の趣旨は主として投資用不動産の期待利回りについてであるため、その点も多少行き違いがあったかもしれません。

今後もいろいろな角度から発信していきたいと思いますのでどうぞご意見下さい。
(^T^)/

テーマ : 不動産
ジャンル : ビジネス

不動産は現物だ?

必ずしも全面的に同意しているわけではないのですが、不動産の価値は現物にこそあるという意見にも一理ありますので、この観点から考察してみます。

例えば、企業の経済価値はB/Sで言えば貸方の内訳とは関係なく、同じ不確実性で同じキャッシュフローを生む会社の価値は同じとなります。企業の価値というものは、理論的にはその企業が将来生むであろう収益の現在価値ですから、同じキャッシュフローで同じ事業リスクの企業は同じ価値でなければ裁定取引が生じちゃう観点からもおかしいわけです(但し、借入金の支払利息は損金算入できますので、厳密には法人課税を考慮外とした場合の理論的な話である点にご留意下さい。参考:モディリアニとミラーの不変定理)。

借入金が多い企業は、レバレッジによる金融リスクプレミアムがある分、自己資本収益率(株式など出資金の収益率)が高くないといけないだけです。その企業の事業リスクに応じて投下資本コストは決まってきちゃいます。

資金調達の内訳の結果資本コスト率(総合的な収益率)が決まるわけではないのです。

不動産の場合も同じで(二重課税が回避された不動産ファンドのイメージ)、その不動産現物の総合的な収益率でその不動産の経済価値(B/Sの借方の価値)は決まるのであって、例えば、100%自己資本を投下した場合も、80%借入れした場合もその不動産の価値自体は同じじゃないとおかしいわけです。そうでないと、どちらかが単純に儲かっちゃうことになり、裁定が生じますので、おかしいことになります。

証券化された不動産の投資家とか言っても、B/Sで言えば貸方の請求「債権」の価値を保有しているのであって、不動産「物権」の価値そのものを保有しているわけではないとも言えます。シニア、メザニン、エクイティとか言ってますが、リスクに応じたこれらの資金調達コストを加重平均すれば、結果的に不動産現物の総合的な収益率に等しくなるように決まるだけで、資金調達コストの内訳次第によって不動産現物の価値が変動するわけではありません。

不動産現物の総合的な収益率がまずあって、しかる後に貸方側のリスクに応じた資金調達コストの内訳が決まってくるのです。

とは言っても、じゃあ不動産現物の総合的な収益率はどのように判定すればいいのかといったら、鑑定理論上はいくつかの方法がありますが、実務は日進月歩しております。取引の現場の状況をカバーしながら、日々研鑽努力するしかないということでしょうか。
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