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不動産の証券化

ここのところ考えさせられる案件が続いたため、しばらくお休みしておりました。

2007年サブプライムローン問題に始まり、2008年3月ベアー・スターンズの経営危機・JPモルガン・チェースによる救済合併、2008年9月リーマン・ブラザーズの破綻を頂点とする世界的金融危機の勃発、いわゆるグレートパニックにより、外資の影響によるところの大きかった我が国の不動産投資市場も著しく後退しました。

ジリアン・テット著「愚者の黄金―大暴走を生んだ金融技術」(日本経済新聞出版社、2009.10.21)やデイビッド・ウェッセル著「バーナンキは正しかったか?―FRBの真相」(朝日新聞出版、2010.4.30)などを読んでみますと、金融の最先端がこれほど脆弱な構造だったとは思いませんでした。20年以上前に読んだハルバースタムの「ベスト&ブライテスト」(最良にして最も聡明なはずのアメリカの誇るべき英知ある人びとが何故ベトナム戦争の泥沼へ母国を引きずりこんでいったのかを克明に描いたドキュメンタンリー)を思い出します。最近(2009.12)、当時とは別の出版社から新装版が出版されているようですので、何らかのアナロジーを感じている人がいるのではないでしょうか。今回、金融の最先端で活躍していたベスト&ブライテストな人びとが何故大暴走してしまったのか、特に「愚者の黄金」を読むとぞっとします。バーナンキFRB議長は、さすがに世界大恐慌研究の権威だけあって、まだ歴史の審判が下ったわけではないとしても、現在までよくがんばられたと思います。

ところで、我々鑑定士の業界も証券化不動産の再鑑定案件はありましたが、新規の鑑定案件はめっきり減ってしまいました。国交省の資料によりますと、2007年に証券化された案件が約8.9兆円だったものが、2008年には約3.1兆円(対前年比△65%)にまで減っています。2009年のデータはまだ公表されておりませんが、現場で聞く限りでは少なかったのではないかと思います。今年に入ってから、証券化を含め不動産市況も若干回復基調にあるのかな?と感じられる兆候はありましたが、現在、ギリシャ問題がちょっと気がかりではあります。

証券化不動産の鑑定等については、今年の1月1日から、評価報告書を作成し署名押印する鑑定士とは別に、評価報告書を審査する鑑定士(記名のみで、押印はなくても可)も必要となりました(財務諸表の作成目的の場合も同様です)。鑑定業者の内部統制体制を整備し、よりいっそうの信頼性の向上を図ったもののひとつです(でも、我々にとっては負担が重くなりますが・・・・)。

ポピュラーな不動産証券化スキームについて、ちょっと前に若干変わった点がありますので、今回はその話をします。

不動産プライーベートファンドを前提とします。

最もポピュラーなスキームは「TK-GKスキーム」と呼ばれているものです。ヴィークル(箱)としてのSPC(特別目的会社)を貸借対照表になぞらえて説明します。

【SPC】
合同会社(GK)→信託受益権者・匿名組合(TK)上の営業者

【借方】
(アセット)①信託受益権(不動産)

【貸方】
(デッド)②ノンリコースローン ← レンダー
(エクイティ)③匿名組合出資 ← 匿名組合員(投資家)
(資本金)← ④一般社団法人(100%出資者)

③の匿名組合は、商法535条に定められているもので、匿名組合員と営業者の2者からなる組織形態です。匿名組合には法人格がありませんので、法人税が課税されません(法人税基本通達)。したがいまして、匿名組合上の営業者(本スキームでは合同会社)が行う事業の利益をそのまま匿名組合員(投資家)に分配できることになります。投資家は合同会社の不動産事業利益をそのまま配当として受け取れるわけです。その際、匿名組合上の営業者たる合同会社の法人税計算に当たっては、匿名組合員(投資家)に分配した利益相当を損金算入できますので、合同会社にはほとんど法人税が課税されません。「二重課税の回避」が図れるわけです(投資家だけが法人税あるいは所得税等を考慮すればいいわけです)。

この匿名組合を利用する場合には、実物不動産ではなく、信託受益権の取得にほぼ限定されます。実物不動産を取得するスキームでは、営業者は「不動産特定共同事業法」の許可を得る必要がありますが、これは実態のある不動産会社等を想定しているため、SPCが当該許可を得ることは困難だからです。

なお、匿名組合を利用する場合は、金融商品取引法第2条第2項第5号の規定に定められた「商法第535条に規定する匿名組合契約に基づく権利のうち、当該権利を有する者が出資した金銭を充てて行う事業から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利」で同法同条同項の規定により「みなし有価証券」に該当することになります。

一方、ちょっと前に変わった点は、上記④の部分です。以前はこの部分に「有限責任中間法人」が利用されていましたが、2006年3月に公益法人制度を抜本的に改革するということで、公益法人制度改革3法案が閣議決定され、その一つとして「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が、2006年6月2日に公布され、2008年12月1日から施行されることになり、その施行に伴って「中間法人法」は廃止されました(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)。

中間法人を利用していたのは、「SPC(合同会社)の倒産隔離」のためです。これは、SPCが投資家の意にそぐわない行動(倒産手続、定款変更等)をとらないようにする仕組みです。中間法人は、基金の拠出者と議決権者を別々に定められましたので、仮にスポンサー等が基金を拠出したとしても、議決権者としての社員に利害関係のない第三者である公認会計士等を就任させれば、中間法人自体をスポンサー等と切り離された組織にすることができるわけです。そして、中間法人をSPCの100%出資者にすれば、「SPC(合同会社)の倒産隔離」を図れるというわけです。

ところで一般社団法人ですが、法務省のHPの説明によれば、下記の特徴があるようです。

・社員2名以上で設立可能。設立後に社員が1人だけになっても、解散しませんが、社員が欠けた場合(0人となった場合)には解散することになります。設立時の財産保有規制は設けられていません。

・社員総会及び理事は必置。定款の定めによって理事会、監事又は会計監査人の設置が可能。

・資金調達及び財産的基礎の維持を図るため、基金制度の採用が可能(任意)。

・次の()から()までの事項は、定款に記載(記録)しても効力を有しないこととされています。()一般社団法人の社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定め、()法の規定により社員総会の決議を必要とする事項について、理事、理事会その他の社員総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定め、()社員総会において決議をする事項の全部につき社員が議決権を行使することができない旨の定款の定め。

・一般社団法人が行うことができる事業に制限はありません。収益事業を行うことも何ら妨げられません。ただし、株式会社のように、営利(剰余金の分配)を目的とした法人ではないため、定款の定めをもってしても、社員や設立者に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を付与することはできません。

・一般社団法人は、定時社員総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大規模一般社団法人にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければなりません。

・設立後二年以内の事業用財産の取得(旧中間法人法第37条)に係る諸手続に相当する規定がない。

概ね中間法人と同様の利用が可能な組織のようです。基金の募集が任意になったこと、設立後二年以内の事業用財産の取得に係る諸手続が不要になったことなど、証券化スキームの組成時の負担は軽減されるようですが、貸借対照表の公告が新たな負担になります。

以上の「TK-GKスキーム」のほかに、ポピュラーなものとしては「TMKスキーム」というものがあります。TMKは、「資産の流動化に関する法律」に基づく「特定目的会社」の略です。説明は省略しますが、このスキームも「二重課税回避」「倒産隔離」が図られています。「倒産隔離」について、特定出資する法人が有限責任中間法人から一般社団法人に変わった点は上記と同じです。

「TMKスキーム」に特有な点は、法定された「資産流動化計画」を作成して、当該計画に沿って不動産の取得、運用及び処分を実施しなければなりませんので、あらかじめ取得する不動産を特定しておかなければならない点です。追加取得等を臨機応変にできないことがやや使い勝手の悪い点です。

ただ、「TMKスキーム」の場合には、「信託受益権」だけでなく、「実物不動産」を取得することもできますので、このような場合には多く利用されます。

不動産の証券化案件は、利害関係者が多いので、スキーム図を作成すると全体が把握できます。

早く市況が回復してほしいものです。(^E^)
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