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マンション 敷地利用権がない?

敷地利用権がない\(◎o◎)/!なんていうマンションあるの?
あり得ます。
先週、我ら「やまと鑑定」のメンバーでの飲み会の席で、たまたまでた議論でした。

建物の区分所有等に関する法律第10条では、「敷地利用権を有しない区分所有者があるときは、その専有部分の収去を請求する権利を有する者は、その区分所有者に対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。」と規定しています。ということは、「敷地利用権を有しない区分所有者」が生じる事態があり得るということを前提としています。

昭和58年に区分所有法が大改正されたとき、専有部分と敷地利用権の分離処分が原則禁止されましたので、現在ではこのような事態が生じるケースはそう多くはないとは思います。この改正によって、一体的登記簿への改整が行われることになりました。不動産登記法も改正され、「敷地権」の登記が導入されました(不動産登記法では、登記された敷地利用権〔所有権、地上権、賃借権等〕で、専有部分と分離処分できないものを「敷地権」と称しています)。当該敷地権登記がなされた後には、仮に分離処分がなされたとしても、善意の相手方にも対抗できることになりました(絶対的無効)。敷地権登記がなされた区分所有建物は、建物が敷地に関する権利と一体化したという客観的事実が公示され、取引の安全が図られたわけです。

昭和58年の改正時の附則で、5年後の昭和63年12月28日までに法務大臣の指定による適用開始と一体的登記簿への改整が行われることになり、専有部分の戸数が50戸以上の区分所有建物の大部分は職権によってこの改整(敷地権登記)がなされました(約1万8千棟、105万戸)。

一方、昭和63年12月28日までに法務大臣の指定を受けないまま経過した既存区分所有建物につきましては、この改正時の附則により、同日付で、法22条1項但書の規定により、「規約で専有部分とこれに対応する敷地利用権とを分離処分できることと定められたものとみなされる」ことになりました。したがいまして、このようなマンションの場合には、集会の特別決議でこの「みなされた規約」を廃止しないかぎり、専有部分と敷地利用権の分離処分が可能(法改正前と同じ)ということになります。築年が古く、戸数の少ないマンションには、まだまだこのパターンのものも多く見受けられます。

なお、区分所有建物といいましても、共同住宅のみのマンションもあれば、店舗・事務所との複合ビルなどもありますし、区分所有の店舗・事務所ビルなどもあります。敷地利用権も所有権の共有、地上権・賃借権(建物所有目的の借地権)の準共有もあれば、土地分有型もあり、所有権と借地権が複合されたものなどもあります。さらに、一部の区分所有建物のみ敷地権登記がなされ、他は非敷地権のままという複雑なものもありますし、土地(所有権)の各筆が不整形で複雑に配置され、各筆の所有権自体を敷地利用権とすべきものもあり、まさにさまざまなケースがあり得ます。

ただ、分離処分が原則禁止される敷地利用権は、「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合」(法22条1項本文)ですので、該当するのは、敷地利用権が所有権の共有あるいは地上権・賃借権の準共有の場合などです。区分所有建物の敷地が数筆に分かれ、区分所有者が、それぞれ、この敷地のうちの一筆又は数筆の土地について、単独で、所有権や地上権・賃借権などを有する、いわゆる分有形式の場合には、これ(法22条1項本文)に該当しませんので、分離処分は可能ということになります。

したがいまして、新しい区分所有建物だからといって、必ずしも、分離処分禁止で、敷地権登記がなされているというものではありません。

こうした中で「敷地利用権を有しない区分所有者」が生じるケースとしては(ここでは主として敷地利用権が所有権の共有や地上権・賃借権の準共有の場合の一般的なマンションを前提とします。)、

①専有部分と敷地利用権の分離処分を禁止していなかった昭和37年法のもとで分離処分がなされた場合、
②昭和63年12月までに法務大臣の指定を受けないまま経過した既存マンションで、上記の「みなされた規約」を廃止していないもとで分離処分がなされた場合、
③現行法22条但書に従って規約で分離処分を認める旨を定めたことによって分離処分がなされた場合、
④借地権付マンションにおいて、地代不払い等で借地契約が解除され、それが認められた場合、
⑤敷地権登記がなされていないマンションで、分離処分禁止に違反する処分であったが、相手方が善意であったためその無効を主張できない(法23条)場合、

などが考えられます。

では、「敷地利用権を有しない区分所有者」が生じてしまった場合の扱いはどうなるでしょうか。最初に述べた建物の区分所有等に関する法律第10条によれば、下記のとおりとなります。

敷地利用権を持ってない区分所有者がいるときは、敷地の権利者(当該専有部分の収去を請求する権利を有する者)は、敷地利用権を持ってない区分所有者に対し、区分所有権を、時価で売渡すことを請求できることになります。

この売渡請求権は形成権ですので、請求権行使の意思表示によって、一方的に時価による売買契約成立の効果が生じます。

とはいえ、収去請求権を失うわけではないので、構造上収去可能であればこちらでも可です。ただ、他の区分所有者の専有部分に影響を与えるときはその承諾が必要と解されており、収去によって他の区分所有者の権利を害せば不法行為責任が生じます。他の区分所有者の権利を著しく害するようであれば、そもそも権利の濫用として認められないと思います。

「時価」については、若干の議論があります。

時価に、専有部分の価値に加えて共用部分の共有持分相当の価値も含まれることに争いはないようです。

判例では、区分所有建物の場合、他の共有者の権利を不当に害することになり、法律構成上も困難などの理由で、敷地共有持分の上に法定地上権は成立しないとされおります(東京地裁昭和52.10.27、東京地裁昭和53.2.1、東京地裁平成3.1.30など)。

そうしますと、「敷地利用権を有しない区分所有者」は、敷地の権利者からなされる売渡請求か収去請求のどちらかに服するということになります。

収去請求が認められるのはレアケースだと思いますので、売渡請求のみ検討します。

東京地裁平成3.1.30の判例では、「収去がほとんど不可能であることからくる収去されない場所的利益」を認め、時価の算定に際し加算すべきであるとされたようです。

「場所的利益」を加算すること自体を否定する見解はほとんど見当たらないようですが、その内容については見解が分かれているようで、整理すれば大きく二つに分かれると思われます。

①借地法あるいは借地借家法の建物買取請求権と同一視する見解
②収去がほとんど不可能であることからくる収去されない場所的利益とする見解

上記①の借地法あるいは借地借家法の建物買取請求権での議論は、借地関係消滅時における地主と借地人との利害調整を背景にでてきたもので、建物の時価には借地権価格そのものは含まれないとするのが判例・多数説となっており、一方、場所的利益を含めるか否かについては、当初、肯定・否定の両判例がありましたが、最高裁昭和35年12月20日の判例以降は、場所的環境を考慮した多くの判例がでて、建物の時価には「場所的利益」を含めるということに学説・判例は固まっています。

では、この借地法あるいは借地借家法の建物買取請求権と区分所有法10条の建物買取請求権とをまったく同一視してもいいものでしょうか。

弁護士荒木新五編著「現代マンション法の実務」(商事法務研究会、H12.8)では、区分所有法「10条が予定している区分所有権者と敷地利用権者」と、「高価な対価を支払って借地権を購入したり地価の上昇に貢献した借地人と土地所有者の関係」とは、同一視できないといえるのではないかとし、区分所有法10条の建物買取請求権と借地法あるいは借地借家法の建物買取請求権とを同一に論じることは妥当でないとしています。

確かに、「敷地利用権を有しない区分所有者」が生じるケースを考えれば、敷地利用権とは切り離された建物の区分所有権を取得した人か、あるいは地代支払いなどの債務不履行によってその事態を生ぜしめた人なので、借地権消滅時の建物所有者たる借地人とは事情が異なっています。私も、両者をまったく同一に扱うのは妥当性に欠けると思います。

とはいえ、判例では区分所有建物の法定地上権成立が否定され、これを批判する学説が比較的多いことを勘案しますと、当事者の状況を利益衡量のうえ、「収去がほとんど不可能であることからくる収去されない場所的利益」を考慮すること自体は、経済価値的側面からの利益衡量という点では、法律構成は別にして、個人的には妥当と考えます。

ただ、その場合の「場所的利益」としては、東京地裁平成3.1.30の判例における「建付地価額の30%」などではなく、「結果的に無償で事実上使用できている」ことを考慮し、「使用借権」と同程度、例えば「堅固建物の場合土地価格の20%」程度、この程度を上限として、個別具体的な事情に応じて判断していくということが妥当ではないかと考えます(使用貸借も、無償とはいえ、当事者間の合意に基づく無償・片務・要物契約ですから、このような前提のない本件をこれと同じというのも衡平性に欠けると考えますので、あくまで「上限」と考え、0%~20%の範囲で個別具体的な事情に応じて判断する方が個人的には妥当と考えます)。

不動産関係に身を置いてから、結構長いと思っておりますが、「敷地利用権を有しない区分所有者」には2回ほどしかお目にかかったことはありません。

そのうちのひとつは、昭和40年代後半に建築された古いマンションで、明らかに共用部分と思われるスペース(受水槽室や機械室でした)が専有部分として登記され、分譲業者から転々と所有権が移転され、何かの債権の代物弁済として取得した方だったと記憶します。敷地の共有持分は、どれが対応するのか判別不能でした。たぶん、敷地の共有持分をすべてエンドユーザーに売却してしまい、敷地利用権のない当該区分所有建物のみが残ってしまったのではないかと考えられるものでした。確か、最終的には管理組合と交渉して安く買取ってもらったと思います。

マンションは、法的側面のみならず、経済価値的側面などが複雑にからんだ問題も多く、弁護士やマンション管理士のみならず、不動産鑑定士としても積極的にコンサルティングに加わっていくべき分野が多いのではないかと思います。
(^E^)
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