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高架下地と借地権

たま~に高架下地の鑑定を依頼されることがあります。高架下地というのは、地上から高く支台を架設し、その上に敷設した鉄道または高架道路の直下の土地のことをいいます。

高架下地の評価を行なう局面としては、当該土地を第三者に貸し付けることに伴い、建物が高さ・配置などの利用制限を受けること、騒音・振動による快適性の低下、日照・採光あるいは通風・換気の障害による環境的影響を受けることなどを考慮した元本価値を求めるケースなど、依頼目的としては、賃料を求めるケース、借地権価格を求めるケースなどがあります。

ここで話の対象としますのは借地権価格を求めるケースです。その中でも鉄道高架下地の話です。また、論点が明確になりますので、私鉄の場合ではなくJRの場合です。

そこで、どのような方法で価格を求めるのかの前に、そもそも論として問題になるのが「鉄道高架下地の貸借関係について、旧借地法あるいは借地借家法(以下「借地借家法等」といいます。)の適用があるか否か」ということです。

この点について、下級審の判例はいくつかありますが、最高裁の判断が示されたことは実はまだないのです(だいたいが高裁で和解しているのだと思います)。

鉄道高架下地が貸借されているケースは、全国的にも結構な数になると思います。今年の7月15日に家賃・更新料についての最高裁の初めての判断が示されました。その影響がかなり広範囲に及びますので注目しておりましたが、結果的に取引慣行にも配慮された妥当な判断でした。鉄道高架下地の貸借もその影響がかなりの広がりをもつ可能性があるだけに注目はしているのですが、まだそこまでいきそうな事案は見当たらないようです。

本件の話の対象については下記の時代区分をする必要があると思います。

①旧国鉄時代に日本国有鉄道法により国有財産のうち行政財産に「準じた」扱いがなされていた時代の話(昭和25年4月以降、国鉄には国有財産法が適用されないことになっていましたので、上記以降の法律関係に適用される法規は、公法法規ではなく、私法法規と解されておりましたが、国有鉄道の行政財産たる企業用財産として、国有財産法上の行政財産に「準じた」扱いがなされていた。基本的には、旧借地法の適用はないという扱いがなされていた〔反対説もあるにはありましたが〕。)

②旧国鉄時代からの契約がそのまま自動更新されて、昭和62年4月1日に旧国鉄から移行した特殊法人の日本国有鉄道清算事業団の財産として引き継がれたものの話

③旧国鉄が民営化(昭和62年4月1日)されて以降も、旧国鉄時代からの契約がそのまま自動更新されて、鉄道営業向けの事業用財産を承継したJR各社との間で、特に再契約などを経由せず、貸借関係が継続したままとなっているもの(短期契約が繰り返し更新されてきたものが多い)

④基本的な時代区分は後記⑤と同様であるが、敷地上の建築物が、明らかに一時使用と呼べるようなものあるいは建物というより工作物に類似するものである場合

⑤旧国鉄が民営化(昭和62年4月1日)されて以降に、鉄道営業向けの事業用財産を承継したJR各社との間で締結された土地の貸借の話(従前より貸借していたが、民間会社同士で一般的な建物所有目的の土地の賃貸借契約〔堅固建物所有目的で期間も30年など長期〕を新たに締結し直した場合)

下級審の判例は、見渡した限りでは上記①乃至③に該当するもののようです。④については、借地借家法等の適用なしということで特段問題はないと思います。

①乃至③について、判例の傾向としては、「借地借家法等の適用がない」とするものが多いようです(いくつか「適用がある」としたものもあるにはありますが)。

問題は⑤の場合です。個人的には、この場合は「借地借家法等の適用がある」とすべきだと解します。もちろん、建物が高さ・配置などの利用制限を受けること、騒音・振動による快適性の低下、日照・採光あるいは通風・換気の障害による環境的影響を受けることなどを考慮した元本価値を前提とする借地権ですので、通常の借地権よりもそれ相応に減価された元本価値に即応した借地権ということにはなりますが。

JR各社も、駅中などを有効活用してその成果が話題となっている現在では、さすがに⑤のような契約は締結しないと思われますが、⑤のような契約も現存しているのではないかと思います。

上記②のケースではありますが、「借地法の適用がない」とされた判例(東京地裁H7.7.26判決)では、以下のような判断が示されました(判例タイムズ№945〔1997.9.25〕)。

・本件使用承認に基づく本件高架下の貸借関係は、貸借の対象が土地ではなく、地表を含む空間(地中は含まない。)であり、また、

・鉄道高架線を支えるために設けられた支柱(橋脚)と基礎部分(地表)とから生じた空間を利用して便宜重複的かつ副次的に本来の目的を妨げない範囲で

・他人に簡易な建物に類する工作物の所有を許すものであり、

・主たる目的が建物所有ではないから、借地法の適用はなく、民法が適用されるべきであり、

・本件使用承認に基づく合意の性質は、私法上の無名契約である、

と判示し、

・本件貸付規則(旧国鉄が定めた土地建物貸付規則)に基づく使用承認は、国鉄が右規則に従った内部意思に基づき相手方当事者との合意により行う特約という性質を有するもので、

・特段の事情のない限り民法の貸借関係規定と異なる内容を特約(合意)したものとして有効であり、

・したがって、期間を3年とした合意及び国鉄の都合による使用承認の取消しを定めた特約は有効であるから、本件高架下の使用承認は本件承認取消しにより終了した、

と判示しました。

民法解釈上、地下又は空中の地上権についても借地法が適用されると解されており、地下又は空中の賃借権も、登記はできませんが、有効と解されております。

また、判例(最判昭42.12.5)では、借地法1条の「建物ノ所有ヲ目的トスル」とは、借地使用の主たる目的が、借地上に建物を築造し、これを所有する場合を指し、借地上に建物を築造し、所有する場合であっても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的に過ぎないときは、これに該当しないと解するのが相当、とされています。

東京地裁H7.7.26の判例では、使用承認の対象は、土地ではなく、「鉄道高架下の空間」であり、使用承認の「主たる目的は建物所有ではない」と判断されたわけです。

確かに、前記①乃至③のケースでは、国有鉄道の行政財産たる企業用財産として、国有財産法上の行政財産の扱いに準じて、私法法規関係ではあっても、借地借家法等の適用がないという解釈も、必ずしも不当ではないと思います。

また、一時使用や、建物所有が主たる目的とはいえないというようなケースもあるとは思います。

だからといって、前記⑤のケースをこれらと同一に扱うべきとする解釈は妥当だとは思えません。借地借家法等の適用があると解釈すべきケースも存在すると考えます。契約は自由ですし、「空間の貸借」などではなく、「空間的利用制約がある中での建物所有目的の土地の賃貸借」というものがあってもいいはずですし、これを排除しなければならない理由は何らありません。具体的事案に応じて、契約内容、期間、地代、建物の規模(借地部分に対して相応の規模)、構造、借地人の(空間的利用制約の範囲内での)借地部分に対する排他的独立性等々を総合的に勘案し、借地借家法等の適用の有無を判断すべきものと考えます。

近年、鉄道高架橋鉄道施設の耐震補強工事実施に伴う鉄道高架下の土地賃借人に対する建物収去土地明渡請求事件が増加する傾向にあります。震災の影響もあり、今後さらにこのような事件が多くなる可能性もあると思います。

借地権の価格は、一面で土地を長期間占有し、独占的に使用収益し得る安定的利益を背景とした経済的利益を反映しております。最低存続期間の保証、法定更新制度、正当事由制度による保護、譲渡等による代諾許可制度等、借地権の強化、安定化が図られております。これが市場流通性を高め、有効需要の存在により経済価値を生じさせる面があるわけです。

したがいまして、借地借家法等の適用の有無は建物所有目的の土地の賃借権の経済価値判断に大きく影響してしまう大変重要な事項なのです。

鉄道高架下地の貸借に借地借家法等の適用がないのであれば、そもそも鉄道高架下の借地権価格の評価もあり得ないということになります。

確かに鉄道交通は公共性のある事業ではありますが、当該事業の障害とならない範囲内での借地権の設定は、当事者の自由であり、これを排除する方向の意思解釈の流れは、必ずしも妥当ではないと考えます。

具体的な評価手法にまでは言及できませんでしたが、気になる論点でしたので書いてみました。

では(^E^)
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